Liutaio 田口隆さんの紹介


バイオリン職人 田口隆さんは現在千葉県柏市で工房を開いています。

1997年〜2019年イタリア・クレモナのCarsen & Neumann工房で主席修理人として20年以上も働いていました。

この工房はイタリアで一番有名な工房なのでヨーロッパ各地から楽器がそこに集まりました。ストラディバリやグァルネリを

始めとする重要な楽器を彼は修理調整していました。

イタリア人に言わせると「彼こそ最後のサムライ」となります。一本筋の通った職人です。

彼は自己宣伝をしないので、彼と長年の友人である私がここで紹介します。

楽器のことで困っている方は彼に直接連絡を取ってください。

バイオリン職人 田口隆  住所 〒277-0022千葉県柏市泉町16-26 並木ビル3-A TEL 070-2172-2018


   


※彼とのクレモナ時代のエピソードは当HPの「バイオリン奮闘記」に記載しています。約30年前の出来事です。その一部を抜粋し下記に記しました。


田口隆氏と私は隣同士なので、そのうち仲良くなり同じ目標を持つようになった。普段はバイオリンを作って
いるのだがいつも決まって夕方6時になるとドアがノックされ「岩井さん今日もあれやりましょうか」と田口氏が言ってくる。
「そやな。1時間後やろうか」と決まり、1時間で仕事の段取りをつけ終わると7時には2人で筋力トレーニングが始まる。
冬場は奥の部屋にある私のトレーニングルームでやるので問題はなかったが、夏は部屋が暑くなり過ぎるので、
我慢できず少しでも涼しい部屋の外に出る。そこは多くのイタリアのアパートがそうであるように、中庭があり広々
としていて家の中よりは風通しも少しは良い。その2人のトレーニングは私が帰国する前日までやったので2〜3年は
続いただろう。初めはベンチプレスも80kgくらいから始まったが帰国前は100kgを越えていた。この重量になると
必死にならないと上がらない。夏の暑い時は上半身裸になり、1人が上げるときは1人が補助役になる。ウーとか
アーとか声を発しながら、100kgを何回か持ち上げるとあまりの暑さで2人は息を弾ませながら中庭に出ては体温を
下げた。2人は日本語で会話をしていたので、同じアパートの住人は、意味がわからなかった。夕方になると2人の
日本人が上半身裸になって部屋を出たり入ったり楽しそうに会話をしている。それをほぼ毎日繰り返していた。
私達2人にとっては普通の行為だが
周りの日本語が判らないイタリア人にとってはきっと不思議な光景だっただろう。
 いまとなっては、彼はもう私よりずっと長くイタリアに暮らしている。私は毎年5月にイタリアに行くが、その時は
クレモナで2人で食事をする。この時決まって
「あの頃はバイオリンと全く関係が無いあんな事に夢中になってよく
やったなー」と話が盛り上がる。当時100kgを持ち上げること。それは何故か2人にとても重要であり達成感のある
事だった。
昨年その彼が、何年ぶりかに日本の私の家を尋ねてくれた。今もブルース・カールソンの工房で働き、
家でもバイオリンを作る事を続けていて、2007年のイタリアでのバイオリン製作コンクールで優勝して本職のほうも
がんばっているとの事。
 なんとそのコンクールの審査委員長は私のパルマ時代のマエストロであるスコラールベッツァだった。あのマエストロが
選び抜いた1本だからきっと玄人好みのバイオリンに違いない。彼も腕の良い、しぶい職人になったものだ。
これからの活躍が楽しみである。